サイバースペース保護 のポストは、オバマ大統領がサイバースペース保護のための政策を発表したことについて書かれていますが、この中にYouTubeビデオでスピーチの様子も見られるようにリンクがあります。

  このスピーチで興味深いのは、オバマ大統領はその中で、昨年の選挙キャンペーン期間中にオバマ陣営で使われていたコンピューターシステムに侵入があったことを語っていることです。特に昨年8月から10月にかけての期間に「ハッカーが電子メールやキャンペーンファイル、政策ポジションペーパーや旅程へのアクセスを得ていた」ことを明らかにしています。(ただし、選挙資金集め用ウェブサイトは被害はなかったことも説明し、「みなさんの機密個人情報や会計情報は守られていました。」という部分で笑いも誘いますが)

  オバマ大統領は2008年の大統領選挙運動に際して、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)をはじめとして、あらゆるメディアを使ってアメリカ国民の支持を集めたといわれ、群集の意思をうまく束ねて勝利したという評価が高いですが、自身の経験としてサイバーセキュリティを語れる最初の大統領とも評されるかもしれません。

  また、 サイバースペース保護 で引用されていた「現在の情報時代は、まだ初期の段階にあります。我々はWeb 2.0に生きているに過ぎないのです。」というセンテンスは「今から、我々のバーチャルワールドは感染するように拡大して行くでしょう。(Now our virtual world is going viral.)」と続き、テクノロジーがユビキタスに普及していくことも予想しています。

  このスピーチではいくつもの重要な点が上げられていますが、興味深いのは政策アクション方針として3番目に上げられている「我々は、この目的に向かう努力のために非常に重要な、公共/民間パートナーシップを強化して行くつもりです。(we will strengthen the public/private partnerships that are critical to this endeavor.)」という部分でしょう。特に、次のセンテンスでは情報インフラが民間によって運用されていることを認め、その次のセンテンスで「私の政権は、民間企業に向けてセキュリティ標準を一方的に指令するつもりはない。(My administration will not dictate security standards for private companies.)」と、はっきり言い切っています。

  これはなぜ重要かというと、アメリカ政府周辺機関において、どの機関がサイバーセキュリティのイニシアティブを取るかが、長い間議論の的となっていたからです。サイバーセキュリティに対して、軍では、国防の延長として軍が指揮を取り民間が従うべきだという主張があります( 投票:サイバー防衛 のポストにある「米国空軍大佐がSkynetを提案」リンクで見られますが、この大佐は軍用ボットネットを提案していました)。また、暗号解読や海外通信の盗聴活動で知られるNSA(国家安全保障局)では、国家安全保障の枠組みの延長としてNSAがリードするべきという流れもあります。

  しかし、実際のインターネット・インフラが民間企業が結集して作り上げたものである以上、これらの国か軍が一方的にサイバーセキュリティを指揮するという発想には本質的に無理があります。今回オバマ大統領がその点をはっきりさせたことは非常に重要です。ただし、それと同時に、これは民間企業に対して国家レベルのサイバーセキュリティの責任を一翼を求めることでもあります。この点については、今後さらに議論が出て来ることでしょう。