スペインの新聞「El Pais」が、「2年前マドリードで154人の命を奪ったSpanair旅客機の墜落に、コンピュータウィルスが関与していたかもしれない。」と報道している。

El Pais

  「飛行機で技術的な問題を記録したSpanairのセントラルコンピュータは、有害なコンピュータプログラムによって汚染されていたため、適切に機能していなかった」と、同紙は続けている。

  我々は、マルウェアが関与したかどうか確認する事はできないし、どのマルウェアの可能性があったのかを知ることもできない。しかし、我々は長年にわたって、コンピュータ問題により影響を受けた、現実世界のインフラストラクチャを見てきた。ほとんどの場合、それは副作用に過ぎない。すなわち、問題の背後にあるマルウェアは、システムをダウンしようとしていたわけではないが、結果的にそうなった、ということだ。

  これは2003年、現実のシステムで、マルウェアによって誘発された問題が前例のない被害をもたらした際には特にひどいものだった。主要な容疑者は、ネットワークワームSlammerおよびBlasterだった。

  Slammerに起因するネットワークの混雑は、全インターネットのネットワークトラフィックを劇的に遅くした。世界最大のATMネットワークの一つがクラッシュし、その週末ずっと停止した。多くの国際空港が、航空交通管制システムのスローダウンを報告。米国の各地で、緊急電話システムの問題が報告された。同ワームは、Davis-Besse原子力発電所の内部ネットワークへの侵入さえ果たし、原子炉の状況をモニタするコンピュータを停止させた。

  Blasterにより創出されたRPCトラフィックは、世界中で大きな問題を引き起こした。バンキングシステムやネットワーク、大規模システムインテグレータで問題が報告された。また、いくつかの航空会社で、BlasterおよびWelchiに起因するシステムの問題が報告され、フライトがキャンセルされることになった。Welchiも、Diebold製造のWindows XPベースのATMに影響を与え、その結果金融トランザクションが妨げられた。米国国務省のビザ・システムのオペレーションが破綻。鉄道会社CSXは、同ワームが列車の信号システムに干渉し、全乗客と貨物輸送のトラフィックをストップさせたと発表した。その結果、米国首都周辺のすべての通勤電車が運行不能となった。

CSX

  その週に起こった米国北東部での大停電に関し、Blasterの間接的な影響があったのではないかと多くの注目が集まった。停電調査委員会の報告によれば、停電の裏には4つの主要な理由があり、その1つはコンピュータ問題だった。我々は、これらの問題が、非常に高い割合でBlasterによって引き起こされたと考えている。

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  たとえSlammerおよびBlasterに起因するシステム問題が、本当に考慮すべきものだったにせよ、これらがワームの副産物にすぎなかったことに注目することが大切だ。これらのワームは、単に増殖しようとしただけで、重要なシステムに影響を与えることを目的とはしていなかった。マルウェアはWindowsとは無関係だった環境に影響を及ぼした。単独で通常のオペレーションを中断させたのは、ワームに起因する大規模なネットワークトラフィックだったのだ。