最近の事件で、証明書、そしてコードサイニングおよびSSL証明書におけるアカウンタビリティの欠如が注目され、大きな問題となっている。

  SSL証明書を持つことは、Webサイトのオーナーが、サイトのビジターに、自分が本当にオーナーであることを証明する一つの方法だ。大部分のインターネットユーザ、そして主要なインターネット会社でさえ、暗黙のうちに認証機関(CA)を信頼している。CAはSSL証明書をWebトラフィックの暗号化のために販売する。これにより、オンラインバンキングやショッピングなど、httpsコネクションを介してセキュアなトランザクションが可能になる。

  しかし、現行の認証システムは1990年代に始まったもので、今日のインターネットの圧倒的な規模や複雑さにうまく対応していない。VerisignやGoDaddy、Comodoといった主要な認証企業に加え、基本的により大規模な企業のための再販業者である地域的なCAさえ何百も、何千も存在する。

  Comodoは先頃、ハッカーがイタリアの再販業者の一社のパスワードとユーザ名を獲得することで、システムに侵入することができたと発表した。そのハッカーはその後、イランの出身であると公に主張しているが、その会社を通じて9つの不正な証明書を交付した。証明書はgoogle.com、yahoo.com、skype.comといったポピュラーなドメイン用に発行された。

  第一に、イタリアの小さな再販業者が、google.comの証明書を交付することができる、というのは驚くべきことだ。あなたは、どこかでサニティーチェックが妨害されたのだろうと考えるかもしれないが、そうではない。

  このような証明書によって何ができるだろうか? あなたが政府で、自国内のインターネットルーティングをコントロールできるなら、すべてのルート変更が行える。たとえば、Skypeユーザを偽のhttps://login.skype.com アドレスに導き、SSL暗号化が存在するように見えるかどうかに関わらず、彼らのユーザ名やパスワードを収集することができる。あるいは、彼らがYahooやGmail、Hotmailにアクセスすれば、その電子メールを読むことができる。プロであってもほとんどが、これに気づくことはないだろう。

  2010年8月、コードサイニング証明書によって署名されたマルウェアサンプルを発見したため、エフセキュアのシニアリサーチャであるJarno Niemelaが、Comodoを巻き込んだID窃盗のケースについて調査を開始した。彼は証明書に記載された企業を追跡し、小規模なコンサルティング会社を見つけた。

  Niemelaはその会社に連絡し、彼らが自分達のコードサイニング証明書が盗まれたことに気づいているかどうか訊ねた。彼らの反応は、コードサイニング証明書は持っていない、というものだった。実際、彼らはソフトウェアの制作さえしておらず、したがってサインすべきものが何もなかった。明らかに誰かが、彼らの名前でその証明書を獲得したわけだ。彼らは企業ID窃盗の被害者だったのだ。

  被害者とComodoの協力を得て、Niemelaはこの証明書が実在する従業員の名前でリクエストされ、Comodoは申込者の身元をチェックするため、電子メールと電話による確認を行ったことを確認した。残念なことに、この詐欺師はその従業員の電子メールにアクセスすることができ、Comodoの電話による確認は、間違った相手にかかってしまったか、誤解が原因で失敗してしまった。

  実際、件の従業員は別のCA会社であるThawteからも電話を受けている。Thawteが彼女に、会社の名義でコードサイニング証明書をリクエストしたかどうか訊ねた際、彼女は「ノー」と返事をした。そこでThawteは、認証プロセスを打ち切った。

  このケースは、入口を見つけるまで、マルウェアの作者が複数のCAを試すということを示している。

  詐欺師が企業のメールにアクセスできる場合、その企業からのリクエストが本物かどうか、CAが確認するのは非常に難しい。評判が良く、やましいところの無い企業が、有効な証明書を手に入れるためのプロキシとしてマルウェア作者に利用されるというケースは、今後増えそうだ。

  認証機関は既に、認証を獲得しようとする疑わしい試みや、その他のシステムの悪用に関する情報を報せる手段を有している。しかし、これらのシステムは人間によって運営されているため、間違いも起こりやすい。我々は、現行のシステムでは、証明書は完全に信頼できるものではないという事実を、受け入れなければならない。

  このトピックについて、最新のYouTubeビデオで取り上げている。