英国人兵士リー・リグビー氏が殺害された悲惨な事件が、最近紙上を賑わせていますが、これは英国当局のこの事件に関する対応をまとめた報告書が公表されたことによるものです。事件の調査委員会が、この事件の責任はFacebookにあると考えていることが明らかになったことで、世間の注目が集まりました。委員会は、Facebookにはこのような襲撃を企む人々を特定し、通報する明確な義務があるとしています。テロについて話しているあらゆる人物を電話会社が通報したり、郵便事業者が怪しい手紙のコピーをすべてロンドン警視庁に提出したりすることと全く同じように(これは皮肉だとおわかりいただけると思います)。
 
英国の当局であるMI5(情報局保安部)、MI6(情報局秘密情報部)およびGCHQ(政府通信本部)は、この事件が起きる前に要注意人物として、犯人のマイケル・アデボラージョとマイケル・アデボワールを特定していたのです。しかし、適切な調査を行わず、Facebookから彼らの通信内容を取得しようとはしませんでした。警察からFacebookに直接要求したり、あるいはGCHQとNSA(米国家安全保障局)の秘密情報部門間の関係を利用するなど、当局には、それを行う方法がいくつもあったはずです。一方、Facebook内部の管理部門は、この2人の通信内容にフラグを付け、彼らのアカウントを自動的にクローズしてはいましたが、当局にはこの件を通報していませんでした。これにより、英国の人々にとって、当局がそのデータを要求しなかったという事実に代わって、Facebookが格好のスケープゴートになったのです。
 
そうです。英国の人々はFacebookを非難しています。いくつかの数値と彼らが実際に求めているものについて、詳しく見てみましょう。Facebook上には、合計約16億のユーザが存在します。13億人が毎月利用し、約8億6,000万人が毎日利用しています。これらのユーザは、約50億のアイテムをシェアし、毎日100億以上のメッセージを送信しています。これは全体として、1時間に約1,000万アイテム、1秒に17万3,000アイテムのストリームが作り出されているということです。テロリストを見つけ出すには、データが膨大過ぎます!
 
Facebookには約8,300人の従業員がいます。マーク・ザッカーバーグ氏を含む従業員の一人ひとりが、就業時間をすべて費やして、メッセージやシェアされているアイテムを監視するとしたら、1秒に60以上ものアイテムに対応しなければならないでしょう。言うまでもなく、このような膨大な量のデータに対しては、なんらかの監視を自動化する必要があります。
 
Facebookは、そのコンテンツを自動的に監視しています。特定のキーワードやキーフレーズがあれば対策が講じられ、それによってアカウントをクローズさせることができます。犯罪者の避難場所になりたい企業はありませんし、多くの有害な行動がユーザ規約で禁止されているため、これはもっともなことです。しかし、Facebookは今、危ない橋を渡っています。Facebookの第一の務めは、法執行機関となることではなく、ソーシャルメディアサービスを提供することです。また、Facebookは罪のない人々を当局に通報することは、非常に無責任なことであるという事実を深く認識すべきです。潜在的なセキュリティの脅威に対処する際には、一般的に受け入れられてきた慣例的な正義はもはや守られず、そこに透明性はありません。西側当局が、明らかに曖昧な証拠に基づいて罪のない人々を拘留し、拷問にまでかけたという事例も多くあります。マヘール・アラール氏の事件は、よく知られた事例です。
 
このため、誰かを通報することに対するハードルが高いのは間違いありません。しかし、疑わしいユーザを締め出すことは、インターネットサービスにとって難しいことではありません。彼らは結局のところ何も代価を支払っていませんし、Facebookも彼らにユーザとして留まってもらわなければならない理由はありません。こうすることは、ユーザ規約の順守を保証し、いかなる違法行為も認めないということです。しかし、誰かを通報するか否かの境界線は、当然もっと高くなります。とりわけ、その規模の大きさからFacebookが自動的に判断せざるをえない場合は、なおさらです。これは、Facebook側の怠慢ではありません。ユーザはもともと、通信においてプライバシーを保護される権利を有しているのです。これはまた、多くの西側諸国では、テロの容疑者が通常の司法制度の領域外で扱われているという事実の直接的な結果でもあります。もしあなたが、そのようなシステムに罪のない人々のデータを提供したら、重い責任を負うことになるのです。
 
現実に目を向けてみましょう。Facebookなどのソーシャルサービス上では、今こうしている間にも犯罪に関する会話が数多く交わされています。多くのテロリストが今まさに電話で話し、計画している攻撃に関連するアイテムを受け取っています。電話会社に日常的に会話を盗聴して潜在的なテロリストを特定することを期待している人はいませんし、郵便事業者に小包を無作為にチェックすることを求めている人もいません。Facebookは、フラグを付けた会話をすべて通報することはしていないかもしれませんが、少なくともテロリストの避難場所にならないための対策を講じています。それでもFacebookは、英国の人々がテロリストの避難場所と呼ぶ唯一のサービスです。ちょっと筋の通らない話です。
 
この明らかな矛盾の原因は単純で、もともとスケープゴートが必要とされていたということです。調査を怠った英国当局には、代わりに非難を浴びる誰かが必要だったのです。
 
しかしまた、さらに危険な一面がここには潜んでいます。スノーデン氏は私たちに、インターネット上のプライバシーに対する脅威を認識させました。広範囲にわたる大量監視は、それまで大部分が極秘にそして違法に行われていました。パンドラの箱は開けられ、世界中の関係当局は、大量監視に対する合法的な権利を得るために(それが実際に何を意味することになるのか、世の中の人々が気づく前に)奔走しています。Facebookに圧力をかけることは、その目的に最適なのです。
 
公正を期して言えば、Facebookにはもっと何かできたのではないかと尋ねることも当然できるでしょう。これについての冷静かつ公正な議論は、歓迎すべきものであり有益です。フラグの付いたメッセージも、おそらく膨大です。Facebookは、どの程度までそれらのメッセージを手作業でチェックするのでしょうか。また、このプロセスを改善することとで、さらに多くの潜在的な殺人犯を捕らえると同時に、罪なきユーザを通報することを防止できるのでしょうか。
 
この問題は多くの人が考えるほど簡単ではないことを、例を挙げて説明しましょう。なぜFacebookが「兵士を殺そう」というフレーズを含むメッセージに対処しなかったのか、人々は疑問を感じています。このブログもそのフレーズを含んでいますよ。そのために私は殺人犯になるのでしょうか。この投稿はフラグを付けられ、MI5に通報されるのでしょうか。
 
 
 
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 Micke