エクスプロイトキットは依然として、クライムウェアの増殖に重要なツールである。このポストでは、今年登場した新たなエクスプロイトキットの中から、ArchieとAstrumの2つについて論じる。

Archie EKは当初、8月には簡素なエクスプロイトキットとして説明されていた。Metasploit Frameworkからコピーしたエクスプロイトモジュールを使っているためだ。

 我々はArchie EKで使用されているエクスプロイトを検知して、当社のテレメトリーを参照した際に、当該エクスプロイトキットが7月第1週に初登場していることを確認した。以来、活動的なままだ。

Archie hits, Jul to Dec

 7月からArchie EKのトラフィックと共にCVE-2014-0515(Flash)のエクスプロイトがヒットしているのを我々は目にしてきた。続いて8月には、CVE-2014-0497(Flash)、CVE-2013-0074(Silverlight)、CVE-2013-2551(Internet Explorer)の各エクスプロイトを検知していることに気付いた。11月までにKafeineが指摘したところでは、このエクスプロイトキットに新しいFlashの脆弱性CVE-2014-0569とIEの脆弱性CVE-2014-6332が統合されている。これもまた当社の上流からも明確に示されている。

Archie vulnerability hits

 当社では、Archie EKが使用するエクスプロイトを以下のように検知する。

  •  Exploit:HTML/CVE-2013-2551.B
  •  Exploit:JS/ArchieEK.A
  •  Exploit:JS/ArchieEK.B
  •  Exploit:MSIL/CVE-2013-0074.E
  •  Exploit:SWF/CVE-2014-0515.C
  •  Exploit:SWF/CVE-2014-0569.A
  •  Exploit:SWF/Salama.D

 他のエクスプロイトキットとまったく同様に、このキットは脆弱性のサポートの範囲内だけではなく、ランディングページでも何か月にも渡って展開している。当社が遭遇した、Archieの初期のサンプルでは「pluginDet.js」や「payload」のような直接的なファイル名や変数名を使っていた。

 以下は、初期のランディングページのコード片である。

Archie Flash payload

 しかし11月中は、少々修正をして難読化を試みた新たなサンプルを目にするようになった。現在では、単純で説明的な変数名の代わりにランダムに見える文字列を使用している。以下は、最近のランディングページのサンプルのコード片である。

archie_flash_payload_v2 (28k image)

 さらに、初期のバージョンでは行っていなかった、アンチウィルスやVMwareのファイルの確認も含まれている。

archie_AVandVMcheck (46k image)

 当社ではこうしたランディングページをExploit:JS/ArchieEK.AおよびExploit:JS/ArchieEK.Bとして検知する。

 ArchieのURLのパターンでもまた、以下のようにトラフィック内で説明的なファイル名を使用していた。

  •  http://144. 76.36.67/flashhigh.swf
  •  http://144. 76.36.67/flashlow.swf
  •  http://144. 76.36.67/ie8910.html
  •  http://144. 76.36.67/silverapp1.xap

 しかし最近では、ファイル名にSHA256の文字列を用いた異なるパターンを観測している。

  •  http://31. 184.194.99/0d495794f41827de0f8679412e1823c8
  •  http://31. 184.194.99/cd8e0a126d3c528fce042dfb7f0f725055a04712d171ad0f94f94d5173cd90d2.html
  •  http://31. 184.194.99/9edcdf010cd9204e740b7661e46c303180e2d674417193cc6cbadc861fdf508a.swf
  •  http://31. 184.194.99/e7e8ed993b30ab4d21dd13a6b4dd7367308b8b329fcc9abb47795925b3b8f9d0.swf

 以下は、当社の上流から報告された、このエクスプロイトキットがホストされているIPアドレスだ。

Archie IP table

 当社のテレメトリーによると、もっとも影響を受けている国はアメリカとカナダである。

Archie, country hits

 Archie EKの共通のペイロードは、トロイの木馬型のクリッカーだ。以下は、当社の上流を基にしたこのエクスプロイトキットのハッシュの例と、続いて当社で検知したときの識別子だ。

  •  8b29dc79dfd0bcfb22e8954c65066be508bb1529 - Gen:Variant.Graftor.152508
  •  1850a174582c8b1c31dfcbe1ff53ebb67d8bde0d - Gen:Trojan.Heur.PT.fy4@bOYsAwl
  •  2150d6762db6ec98e92bb009b3bdacb9a640df04 - Generic.Malware.SFdld!!.8499435C
  •  5a89a48fa8ef92d1a4b31ee20f3f630e73c1c6c2 - Generic.Malware.SFdld!!.294B1B47

 Astrum EKはもう1つの、エクスプロイトキット市場における今年の新たな担い手である。これは9月にKafeineが初めて報告したもので、Revetonという集団が使い始めたキットのうちの1つであることが判明している。

 当初はCVE-2014-0515/CVE-2013-0634(Flash)、CVE-2013-0074/CVE-2013-3896(Silverlight)、CVE-2013-2551/CVE-2014-0322(Internet Explorer)、CVE-2010-0188(Adobe Reader)の各脆弱性をサポートしていた。10月になって、Astrum EKがFlashの脆弱性CVE-2014-8439を侵害していることをKafeineが指摘した。この脆弱性は、Kafeineと共に当社が発見したものだ。

Astrum vulnerability support

 エクスプロイトキット市場の新たな担い手の1つとなったことは、当社のテレメトリー上でもはっきりと示されており、現在も活動を活発化させ続けている。

Astrum hitcount

 エクスプロイトキットArchieと異なり、Astrumはランディングページにおいて数多くの難読化を行っている。以下は、基本的には同一の2つのランディングページのコード片だ。2つ目のほうはコードの合間に屑コメントや空白文字を追加して、一層の難読化を図り、検知されるのを阻害している。

Astrum landing page codesnippet

Astrum landing page codesnippet 2

 これもKafeineによって述べられているとおりだが、コードの難読化を解除すると、分析ツールやKaspersky社のプラグインを確認することが示されている。

Astrum tools check

Astrum, Kaspersky plugin

 当社ではランディングページをExploit:JS/AstrumEK.A and Exploit:JS/AstrumEK.Bとして検知する。

 以下はAstrum EKがホストされていると報告済みのIPアドレスだ。

  •  http://ad7. […].com.ar/QRtVMKEnSCR8eD9fnxd2SHxwOl7GRXQaKC5kXc4ULxt6IWlcy0omTTI9bg-cDmhPKQ..
  •  http://adv2. […].com.ar/Zhc_UrNYeTNRKVVsiDscWV57AGvSbhcJAy5baY0-EA4NLFQ73WETCxUxBG2OcVlYDg..
  •  http://pic2. […].net.au/nGtsDdma82ajBwA2t_jOC6FUCjW--MsC-FVZYeOuywn3BgYy4fPIV-9NVTjks9MO8w..
  •  http://pic2. […].net.au/nHEeB7017BijH3duhVKAdqJJJDvcVtIh90UvaNdf03ylHSY7gwrQJu9XJzKAHMxw8w..
  •  http://cdn-net4. […].net.au/Y9fEaE97uN9d7v0FdRyCs1yy_wopS9zhDO_3CSVI3uAI7KhQI0fV4RDx_1R3Upi0Cg..
  •  http://cdn-net8[…].net.au/4xuNWu0qxwyNdLxn0xysbIsg6jPeTq9jjnO5MNsZoWPTcbNqgBL_PJA9tmbVA-dnig..

Below are reported IP addresses where Astrum EK is hosted:

Astrum IP table

 当社のテレメトリーに基づくと、次のような国々にてAstrum EKがヒットしている。

Astrum country hits

 ArchieおよびAstrumは、新しいキットのうちの2つに過ぎない。新しいキットはRigNull HoleNiteris(CottonCastle)のように他にもあるし、それ以外にもAngler、Nuclear、Neutrino、FlashEK、Fiesta、SweetOrange、その他のエクスプロイトキットが増殖、発達を継続している。

 こうしたエクスプロイトキットで特筆すべき1つの特徴は、いまやアンチウィルスのファイル、VMwareのファイル、その他の分析ツールを確認することが一般的になった点である。他のNuclearやAnglerのようなエクスプロイトキットも、マルウェア研究者による分析を回避するために、こうした確認を統合している。さらなる詳細については、Kafeineのブログで確認できる。