アレン・スコット、エフセキュア英国・アイルランド法人のマネージング・ディレクター


インターネットおよびインターネットを取り巻く業界は転機に直面しています。多くの組織は、新たな製品およびサービス市場を支配しようと必死になりすぎたために、インターネットがあるべき姿を見失っています。もし、このままモラルが下がり続けると、インターネットを使用するすべての人の権利を侵害する危険を冒すことになります。一般的な経験則から言えば、顧客や見込み客の権利を侵害することは賢明な販売戦略ではありません。だからこそ、2015年の今、信頼できるインターネットでこの流れを食い止めることが非常に重要なのです。

残りは世界の半分

インターネットは、軍によって資金提供されていた学術コンピュータネットワークから、私たちが現在知っているワールドワイドウェブへと変貌してきました。また、数々の新産業と億万長者の経営者たちを生み出してきました。インターネットがなければ決して知り合うことのなかった人々を結びつけることにより、世界は小さく身近なものになりました。家族と連絡を取り合うための手段から、あらゆる案件調査における一番の情報源に至るまで、すべての人々の生活を便利にするために役立っています。インターネットがない生活を想像することはもはや困難です。

もちろん、すべての人がオンラインになっている訳ではありません。数値に多少のばらつきはありますが、現在、約30億人がインターネットに接続されていると一般的に言われています。これは世界人口の42%です。2018年までに、世界人口の半分がオンラインになると予想されています。このことが意味するのは、2人に1人がプライバシーの権利を侵害される可能性があるということです(人権宣言第12条)。この侵害は回避可能なものであるため、決して容認できるものではありません。

個人データ - 究極の再生可能資源

インターネットは今や、人間の生活の一部となっています。すばらしい創造物であるインターネットに、私たちはますます依存するようになっています。問題はこれがフランケンシュタインの怪物に変貌しつつあることです。私たちは何かをすること(オンラインで人々の動きを追跡する等)が可能かどうかに夢中になりすぎて、業界はそれをするべきかどうか自問することを忘れています。「知は力なり」とばかり、より多くの個人情報を獲得しようとする競争の中で、倫理観は脇に追いやられています。

データがそんなに貴重だなんて信じられませんか?Googleをちょっと見てみましょう。このインターネット界の巨人は、昨年110億ポンドを超える利益を計上しました。サービスを無料で提供する会社にしては悪くありません。Googleはユーザに関する大量のデータを収集するため、世界第4位のサーバメーカーとなりました。サーバの販売さえもしていないにもかかわらずです。

個人情報はビッグビジネスです。広告主は、人々のプロフィールに多額のお金を支払います。人々が何を好きで、どこに住み、誰に投票する可能性が高いか、あるいは左利きかどうかなど、各個人のプロフィールに関して最高1,500もの興味深いデータを持っていると主張しているマーケティング企業もあります。この「興味深い点」とは、人々が喜んで共有している情報でしょうか?怪しいものです。

モノのインターネット(IoT)について

次は、モノのインターネット(IoT)です。トースターから橋に至るまで、膨大な数のモノがインターネットに接続され、これらが収集するデータを共有するという概念です。この新しいネットワークの利点は、データを分析することで効率が上がり、人々の生活がさらに楽になることです。たとえば、私のスマートフォンの歩数計、ダイエットアプリ、時計の心臓モニターから収集したデータを組み合わせて、健康状態を分析し、情報に基づいて改善することができるかもしれません。ここまではいい話です。

自分に関するデータを誰が入手しているのかを調べ始めると、IoTが少し嫌なものに思えてきます。私は多分、医者が私のデータを見ても気になりませんが、マーケティング企業や健康保険会社がデータを見るとしたら抵抗があります。これはプライベートなデータだからです。

幸いにも、IoTはまだ始まったばかりの段階であるため、私たちのプライベートな生活にどのように影響していくかを決めていくことができます。しかし、そうするための時間はそんなに長くはありません。そのため、市民の自由を保護するためにはっきりと主張していく必要があります。

倫理的ソリューション

インターネット開発の次の段階は、信頼できるインターネットでなければなりません。人々にはオンラインプライバシー権があり、これを守ることは完全に可能です。オンライン上のすべての会社や組織が、過熱するデータ収集競争に参加している訳ではありません。エフセキュアのように、ユーザが検索エンジンで何を検索したか、どのウェブサイトを訪問したのかを全く気にしない会社もあります(もちろん、悪意のあるユーザは例外です!)。当社は、皆さんのデータは、皆さんのものだと考えています。

インターネットは人々に無料の味を教えました。ユーザは、どこか他のところであれば無料で入手できるサービスに対して、お金を払いたがらなくなっています。しかし今、商品にお金を払っていない場合、自分たちが商品になっていることに気づき始めています。エフセキュアでは、お客様はお客様、ただそれだけです。お客様である以上、データはお客様のものです。私たちの仕事は、お客様とそのデータを守ることです。

インターネットは、人々が学び、交流するための場所だと考えています。自分のプライバシーという形での代償があるべきではありません。もし代償が必要なら、それは金銭であるべきです。そうであれば、個人情報と引き換えにサービスへのアクセスを得るのではなく、お金を払って使いたいサービスを購入するようになります。私は、Google、Facebook、LinkedInや、サインアップの際に料金を求めるその他多くのサイトの一つを使用するためなら、喜んでお金を支払います。

私たちは、インターネットを作った世代です。良識、敬意、プライバシーを捨ててしまう世代にはならないようにしましょう。

>>原文へのリンク