NHKのプロフェッショナルというテレビ番組の中で、"サイバーセキュリティー技術者の中でも最高の技術を持つトップガン"ということで「あの」名和さんが登場しました。

名和利男(2015年9月14日放送)| これまでの放送 | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀

特にマルウェア解析シーンでは突っ込みどころがたくさんありますが、テレビということで大目に見てもらうとして、技術者が誤解したままではマズイと思うことを一点だけ。

終盤でのマルウェア解析の際に、VirusTotalでの検索結果で「b1ef92??」という文字列が出てきたことから、IPアドレスが「177.239.146.???」だと判断してメキシコのサーバを経由した攻撃である可能性がある、という話になっています。
おそらく「b1ef92??」を1バイトずつに分解して、16進数から10進数に変換したのでしょう。

16進数表記 b1 ef 92
10進数表記 177 239 146

ところが、そもそもこの値はVirusTotal独自のハッシュ値ですので、こういった計算でIPアドレスを割り出すことはできません。よって、メキシコというのは誤報でしょう。

では、どこの国を経由した攻撃なのか。それはマルウェア検体自体を解析するのが一番確実です。

マルウェアの中身を見ると、サーバのアドレスは暗号化されていますが、復号ロジックも復号鍵もマルウェア検体自身の中に入っていますので、それを用いて復号するとマルウェアの通信先がわかります。

malwareanalysis

その通信先から、二つ目のサーバに関する情報を暗号化された形で取得できますので、同様に復号すると攻撃者のサーバのIPアドレスがわかります。
そのサーバにアクセスした結果がこちらです。

iisrdp

明らかにメキシコ以外の国が絡んでそうですね。