深圳(Shenzhen)は香港から電車で45分の中国国境内のきわにある「ハードウェアのシリコンバレー」とも呼ばれる経済特区の都市だ。人口は1500万人とも2000万人ともいわれ東京よりも大きく、高層ビルは278本もあり中国第4位の大都市となっている。
そして Tencent, Huawei, DJI, OnePlus, ZTE, Coolpad, Gionee, TP-Link, Beijing Genomics Instituteなどのエレクトロニクス、テレコム、バイオなどのハイテク企業が集中し、华强北(Huaqiangbei)という秋葉原の100倍はある巨大なエレクトロニクスタウンがある。iPhone他のエレクトロニクス製造で拡大してきた都市なので、電子部品、プリント基板製造、アセンブリー、プラスティック成形、金属加工などの企業が群をなして営業している。また好調な経済のため、生活物価は東京とたいして変わらなくなっている。

この深圳についてのビデオドキュメンタリー "Shenzhen: The Silicon Valley of Hardware" をWired UKが制作し、6月に公開された。全部で1時間強になるこのシリーズは、深圳でのIoTとMakersの興味深い最新の動きを取り上げている。

Part 1

Part 2

Part 3

Part 4

特にPart 2は、IntelがIoT向けに一昨年発表したフルPCの機能をSDカードサイズにまとめた「Edison」チップのディベロッパーフォーラムが4月に深圳で開催された場面から始まる。明らかにIntelは深圳がIoT開発の中心地のひとつになると踏んでいる。またIntelが食い込もうとしているIoT開発で、他に使われているのはArduinoやRaspberry Piなどで、ほとんどLinuxやオープンソース・ソフトウェアで動いているものが多い。
Intel Edison

深圳にはハードウェア開発に関わる大きな外国人コミュニティができていて、ヨーロッパやアメリカから来て深圳に住み着いてエレクトロニクス・ハードウェア開発のヒジネスを運営している人達も多い。一説ではシリコンバレーでのハードウェアも3割は深圳で作られていると云われるほどだからだ。

その一つ、HAXはハードウェア・スタートアップ企業のための世界最大のアクセラレーターだ。

当然地元の中国の人達が始めたハードウェア開発のサポートやブローカービジネスも多数ある。Seeed Studioはよく知られているものの一つで、日本にも窓口がある。

そして半田付け用具や測定器、金属加工器具、レーザーカッター、3Dプリンターなどを揃えた、ハードウェア自作派やスタートアップ向けのMaker Spaceと呼ばれる場所がいくつも出来ている。

深圳の動きには当然に日本でも注目している人達がいて、ニコニコ技術部の有志が一昨年から深圳の視察ツァーを開催している。その報告をまとめた「メイカーズのエコシステム」という書籍が4月に発売された。

このメイカーズというのはMakersのことで、O'Reillyが出している「Make」という自作派向けの雑誌から派生して開催されている「Maker Faire」というイベントなどで自作のハードウェアを見せたり販売したりする人達のことを指す。先週8月6,7日には「Maker Faire Tokyo」が東京でも開催されたばかりだ。
Maker Faireは深圳でも開催されている。

これらのインフラが出来ていることで、深圳発のハードウェア・スタートアップ企業が多数出現している。そして彼らのかなりがIoTを手がけている。Intelが深圳がIoT開発スタートアップの中心地のひとつになると考えるのは当然の流れだ。

クラウドファンディングサイトのKickstarterやIndieGoGoなどを眺めても、IoTカテゴリーに入るプロジェクトが多数見つかるし、それらはほとんどスタートアップ企業のことが多い。ところが日本では、特に政府関係者はIoT製品は既存の電機メーカーが作ると考えているのではないか? 7月にIoT推進コンソーシアムと経済産業省と総務省が共同で「IoTセキュリティガイドライン」を発表した。しかし、製品化に脇目も振らずに邁進するスタートアップ企業がこのようなややこしい資料を気にかけるとは考え難い。
さらにそれ以前に、日本でだけこのようなIoTセキュリティガイドラインを作ったとしても、IoT開発の主力地が深圳など海外にあるならまったく影響力は期待できないだろう。