エフセキュアブログ

by:アンティ・ティッカネン

誤検知:Exploit:JS/HuanJuanEK.A

 たった今、当社は誤検知を修正した。数多くのクリーンなWebサイトのコンテンツをExploit:JS/HuanJuanEK.Aとしてしまっていた。

 誤検知が起きるデータベースは、F-Secure Hydra 2014-12-31_02である。F-Secure Hydra 2015-01-01_01には修正がなされており、すでに公開もされている。この誤検知は、WebサイトからダウンロードされたコンテンツをスキャンするWeb Traffic Scanning機能にのみ影響を及ぼす。いまだこの検知が認められるようなら、最新のアップデートを受け取っているか確認をお願いしたい。

Hydra update

 ご面倒をかけて申し訳なく思う。それはそうと、皆様明けましておめでとう!

 -- Antti

諜報ツールキットRegin

 Reginは一連の洗練された諜報ツールキットの中で最新のもので、世界中の広範な組織を標的に使用されている。既報の通り、活動中のマルウェア群でさらに複雑なものの1つで、他の数多くのツールキットとまったく同様に背後には長い歴史がある。我々は約6年前の2009年の初頭に初めてReginと遭遇した。北ヨーロッパの顧客の環境にあるWindowsサーバ上にそれが隠れているのを見つけた。

 そのサーバはたびたびクラッシュし、悪名高いブルースクリーンになっており、トラブルの兆候を示していた。「pciclass.sys」という、当たり障りのない名前を持つドライバがクラッシュを引き起こしているように見受けられた。より詳細な分析を行うと、当該ドライバは実はルートキットであった。もっと厳密に言うとReginの初期のバリアントの1つだった。

Regin File Header

 上のスクリーンショットで認められるとおり、このドライバは明らかに既に2008年3月7日にはコンパイルされているが、それより早いタイムスタンプのある他のサンプルによって、作戦はさらにこれよりも前であることが示唆されている。

 結局のところ、複数の段階がある脅威における1つのコンポーネントに過ぎないことが分かった。このドライバはレジストリキーかNTFSファイルシステムの拡張アトリビュートを使って、次の段階のマルウェアを読み込める。ドライバに埋め込まれた設定が、このことを示している。

Regin config

 我々は少なくとも以下のレジストリキーが、次の段階のペイロード用に使用されているのを目にした。

  •  \REGISTRY\Machine\System\CurrentControlSet\Control\Class\{9B9A8ADB-8864-4BC4-8AD5-B17DFDBB9F58}:Class
  •  \REGISTRY\Machine\System\CurrentControlSet\Control\Class\{4F20E605-9452-4787-B793-D0204917CA58}:Class
  •  \REGISTRY\Machine\System\CurrentControlSet\Control\RestoreList:VideoBase

 以下のフォルダには名前に「_」が付いたNTFS拡張アトリビュートが格納されており、また次の段階のペイロードも格納されているのが見られた。これは実際には2つの異なるアトリビュートに分割され得る。

  •  %WINDIR%
  •  %WINDIR%\security
  •  %WINDIR%\repair
  •  %WINDIR%\msapps
  •  %WINDIR%\msagent
  •  %WINDIR%\Cursors
  •  %WINDIR%\fonts
  •  %WINDIR%\Temp
  •  %WINDIR%\msagent\chars
  •  %WINDIR%\Help
  •  %WINDIR%\inf
  •  %WINDIR%\Spool\Printers
  •  %WINDIR%\CertSrv

 2013年および2014年の間、我々はより新しいバージョンのReginを分析してきたので、攻撃における複雑さと洗練度合が非常に明確になってきた。我々はReginを、Stuxnetや、Flame、Turla/Snakeのようなものと共に、高度に洗練された諜報作戦という同一のカテゴリに配する。

 いつもながら、このような事案で出所を特定するのは難しい。我々の感じるところでは、このマルウェアは珍しくロシアや中国から来たものではない。

GameOver ZeuS用のワンクリックテストサイトを構築

 本日、あなたのコンピュータがGOZ(GameOver ZeuS)に感染しているかを確認する、新たな、そして迅速な方法を当社は発表した。先週、当社を含む業界のパートナーと共に、各国の法執行機関が協力してGOZのボットネットを遮断した。

 GOZは破壊されたわけではなく遮断された、という点を認識するのは非常に重要だ。ボットネットの管理者にとって、近い将来、制御を取り戻すことは技術的に不可能ではない。GOZには100万超台のコンピュータが感染した。時間が最も重要である。

 改善を支援するために本日開始したのが、単にwww.f-secure.com/gameoverzeusを訪れるだけで、あなたのブラウザにGOZへの感染の兆候があるかを確認できるサイトだ。素晴らしい点はソフトウェアを何もインストールする必要がなく、また数秒で終了するところだ。

GOZ detection page

 もっと技術寄りの本ブログ読者なら、どのようにチェックが動作するのか疑問に思っていることだろう。我々はかつてそうしたことを行ったことはないが、ここで詳細について述べるべきだと思う。結局のところ、マルウェア自体にちょっとしたいたずらを仕掛けたのだ。これはいつでもおもしろい。

 GOZは、あるいはもっと言えば他のWindows向けのバンキング型トロイの木馬は、ユーザ名やパスワード、その他の認証情報を盗む目的でブラウザに感染する。Amazon.comに訪れるとしよう。

Amazon login page

 GOZが興味を抱いているサイトに、あなたがログインしようとしていることに気付くと、GOZはブラウザ内部から直接的にあなたの認証情報を盗む。どのようにこれを行うのか?興味のあるアドレスをすべて挙げた設定ファイルを含めているのだ。以下はGOZが追跡しているアドレスのリストの一部だ。

Banks in GOZ config

 お気付きのとおり、当該リストには銀行などの金融機関のアドレスが多数含まれる。GOZは正規表現さえもサポートしており、新たなルールを柔軟に作成できる。正規表現を用いているアドレスは非常に攻撃的になる。

Entries in GOZ config

 「攻撃的」とはどういう意味だ?ええと、たとえば、https://www.f-secure.com/amazon.com/index.htmlというアドレスのサイトを訪れようとする。依然として正規表現がマッチするため、GOZはあなたが本当のAmazonを訪れるところだと考える。つまり我々はこれを用いてGOZのボットに「いたずら」をし、あなたのブラウザが感染しているかどうかをたやすく確認しているのだ。

 それではユーザがAmazon.comを訪れたとき、GOZは実際に何を行っているのだろうか?このマルウェアはブラウザ内部で起動しているので、ログインページに入力しているものを見るだけではなく、Webページをあなたが見る前に改ざんすることもできる。感染したブラウザでユーザがAmazonへ行くと、GOZはページ上に追加的なコンテンツを「挿入」する。以下は、挿入を行う部分のコード片だ。

GOZ code for Amazon

 この余分なコードはログインページに新しいフィールドを追加し、続いてその中身を攻撃者が制御するサーバへと送信する。強調した文字列(LoadInjectScript)は後ほど用いる。

 以上をすべてひっくるめて、我々はどのように当該マルウェアを素早くスキャンできるようにしたのか?

 当社の検知用のページwww.f-secure.com/gameoverzeusは、単に当社のサイト上のページなのだが、「amazon」という文字列を含むアドレスのWebページを読み込む。

iframe on GOZ page

 もし感染していれば、当社のこのページを訪れることで、GOZはあなたがAmazonを訪れると考える。たとえ実際はそうではなくても!続いてGOZは当該Webページに自身のコードを付け加える。我々の「偽の」Amazonページが読み込まれると、「セルフチェック」を行って単純にGOZが加えた変更がページ上にあるかを検索する。上で示した「LoadInjectScript」という文字列を検索するのだ(当社の文字列が見つかるという結果にならないように、分解していることに注意)。

goz_check function

 ページ上に当該文字列が見つかったら、GOZがあなたのブラウザに感染していることが分かる。

 いつもどおり、いくつかの制限はある。GOZがサポートしていないブラウザ(誰かLynx使ってる?あとはネイティブの64ビットブラウザ)を使用している場合、コンピュータは感染しているかもしれないが、ブラウザにはマルウェアの痕跡はない。そのような場合、確認するにはやはり当社の無料のオンライン スキャナを実行することをお勧めする。また、実際に感染しているなら、スキャナを用いて削除する必要がある。

 US-CERTのアラート(TA14-150A)も参照のこと。

 共有すべきリンクはhttp://www.f-secure.com/gameoverzeusまたはhttp://bit.ly/GOZCheckだ。

やる気のある攻撃者が望むものをたびたび手に入れるのはなぜか

 組織外の人から見て経済的な価値を持つ可能性がある情報を保持する企業に、あなたはお勤めだろうか?あるいは、共有ネットワークドライブに保存しているドキュメントへのアクセスを得ると、もしかすると外国で役に立つだろうか?イエス?それなら、おめでとう。あなたは既に、しつこくてやる気のある攻撃者(ときに、ただし稀にだが高度な技術を持つ)の標的になっているかもしれない。

 フィンランドCERTのこちらのプレゼンテーションによれば、フィンランドでさえこうした攻撃が10年近く見られる。昨今では、至る所にある。

 標的型攻撃の好例は、2011年にRSAに対して行われたもので、当社ではティモ・ヒルヴォネンが分析を行った。RSAのネットワークでの感染に関して、ティモがオリジナルのソースを探し、最終的に見つけるまでの話は、この投稿にすべて記載されている。

RSA 2011 email

 RSAは、ある従業員宛てのメールの添付として送付されたドキュメントにより侵害された。このドキュメントには従業員のコンピュータに感染したエクスプロイトが埋め込まれており、攻撃者が侵入するのに不可欠な足がかりとなっている。当該コンピュータから、ネットワーク上の残りのコンピュータを侵害するために移動していくのだ。

 Virustotal経由で我々が受け取ったファイルの中から、ティモはドキュメントを見つけた。Virustotalとは、投稿したファイルをいくつかのアンチウイルス・エンジンでスキャンできるオンライン・サービスだ。ユーザはスキャン結果、つまり悪意がある可能性を確認することができ、またファイルはさらに分析するためにアンチウイルス企業に送付される。Virustotalでは日々数十万のファイルが投稿される様子が見られる。

 悪意あるものを検知するかを確認したいので、我々はVirustotalから送付されるファイルの分析に多大な努力を費やしている。日常的なマルウェアに加えて、不審なユーザがスキャンするために投稿するエクスプロイト・ドキュメントも分析している。

APT animation

 上のすべてのドキュメントにはエクスプロイト・コードが含まれ、脆弱性のあるドキュメント・リーダーでこれらのドキュメントを開くと、ユーザのコンピュータにマルウェアが自動的にインストールされる。ドキュメントからは標的について垣間見ることもできる。このような添付ファイルを受け取ることが予期されるのは、どのような人なのだろうか?

 当社の最新の脅威レポートにて、Jarno Niemelaはこうしたドキュメント一式を取り上げ、そこから文章をすべて抜き出して、用語のクラウドを構築した。

Word clouds

 左側の用語クラウドは、テーマが政治的だと当社で分類したドキュメントからだ。右側のものは、企業をテーマにしていると感じたドキュメントによる。これらのクラウドから、攻撃者の興味を引いているのがどういった分野の類なのか、ヒントが得られる。

 しかしながら、同じトリックが永遠に使えるわけではない。エクスプロイトを添付して十分な数のメールを送ったら、標的は学習、適応する。それだからこそ、「水飲み場型攻撃」という形の新たなトリックを我々は目にしてきた。水飲み場型攻撃は次のように機能する。攻撃者は、標的が訪れると思しきWebサイトを探し出す。Twitterや、Facebook、Appleのようなソフトウェア企業を標的にしたいなら、おそらくモバイル開発用のWebサイトを選択するだろう。政府機関を追っているのなら、アメリカの労働省のWebサイトにIE8用のゼロデイエクスプロイトを仕掛けるかもしれない。その後は単に標的が当該サイトを訪れて、感染するのを待つだけだ。

 そしてまたUSBドライブを使った、古くて優れたトリックがある。

Russia USB G20

 G20首脳に提供されたUSBドライブに実際にマルウェアが含まれていたというニュースを裏付ける情報を、我々は持ち合わせていない。もし真実であるなら、少なくとも攻撃者を楽観性が欠けていると責めることはできない。

 つまり防御はシンプルなのだ。同僚からのメール添付を開かず、インターネットでWeb閲覧をせず、USBドライブを利用しなければよい。もちろん実際には、その他のことも数多く念頭に置いておく必要がある。やる気のある攻撃者から守ることは、非常に非常に困難だ。日々、すべての物事を適切にしておかなければならない。攻撃者はあなたが犯す過ちをたった1つ見つけるだけでよいのだ。悪者たちがそれを得るのは簡単すぎる。そして世の中でこれほど多くの組織が攻撃下に置かれているのは、これが理由だ。

 追伸。こうした攻撃から身を守るためのヒントについて、Jarno Niemelaが今秋のVirus Bulletinにて示したプレゼンテーションを参照するとよい。

偽の「F-Secure Security Pack」という悪意あるブラウザ拡張について

 当社では、ある悪意あるブラウザ拡張を追っている。このブラウザ拡張には、さまざまな異なるソフトウェア企業の手によるものだと表示される。

 これは自身をブラウザにインストールし、Twitter、Facebook、Google+のようなソーシャルメディアサイトにユーザに成り変わって投稿する。バリアントの1つは「F-Secure Security Pack」として自身をインストールする。当社を信じて欲しいのだが、これは当社由来のものでは絶対にない。

 このマルウェアのインストーラは、通常は自己解凍を行う実行形式のWinRARだ。一方サンプルはさまざまな方法で同様にパッケージされている。サンプルの1つから、コンテンツをのぞき見ることができた。

Contents of malware installer

 上のコンテンツから、マルウェアのインストーラに何が含まれているのかのヒントが得られる。拡張子はFirefox用とChrome用のものだ(.xpiおよび.crx)。

 このマルウェアの実行形式のファイルは、「VIDEO TECH PRODUCOES LTDA」と称する企業に割り当てられた証明書を用いて署名されている。

Certificate information

 現時点では、証明書が盗まれたものなのか、あるいは当該企業とマルウェアのサンプルの間に何らかのつながりがあるのかは不明だ。

 Chrome用のインストーラは「F-Secure Security Pack」という名前でブラウザ拡張を登録する。

Foobar

 Firefox用でも、登録情報の詳細にわずかな違いはあるが、同様のことが行われる。

ff_ext

 この悪意あるブラウザ拡張の名前として、マルウェアは標的の地域によって異なるブランドを用いている。たとえば中国では「Chrome Service Pack」、フランスでは「Dr. Web」、ブラジルでは「Kingsoft」となるのを目にした。

extension_chrome_pack

plugin_drweb

plugin_kingsoft

 ブラウザ拡張そのものは非常にシンプルだ。アップデートをC&Cサーバから取ってきて、そのアップデート内の情報を使って、各種ソーシャルメディアサイトに投稿する。ソースコード内のコメントはポルトガル語になっており、マルウェアの発生源についていくつかのヒントが得られる。

extension_spanish_text

 以下はマルウェアがブラジル人ユーザ用のC&Cサーバから取得したアップデート情報の一例だ。

extension_spanish_text

 設定の1つにより、メッセージが自動的にリツイートされる。この設定は書き込み時には有効になっていなかったが、それでもリツイートされるメッセージを見ることはできる。以下の特有なメッセージが5000回以上リツイートされていることを、我々は確認した。

extension_spanish_text

 F-SecureではこのマルウェアをTrojan.FBSuperとして検知する。あるいは、バリアントに応じて、別の様々なヒューリスティックな検知名になる。

 SHA-1:6287b03f038545a668ba20df773f6599c1eb45a2

コンピュータ・ウイルスの分析を学ぶ:5年目

  5年目を迎えた現在、我々はフィンランド・ヘルシンキのAalto Universityと協力し、マルウェア(悪意あるソフトウェア)分析のコースを準備している。最初の講義は1月18日、主席研究員ミッコ・ヒッポネンが行う。あなたがAaltoで学んでいるなら、コースでお目にかかれたら嬉しく思う!

  脅威の様相について良くご存知なら、Androidユーザがますます、マルウェア関連の詐欺の危険にさらされていることに気づいているかもしれない。これは我々のラボで、Androidマルウェア分析のハードワークが行われていることを意味している。こうした努力の一部は、エフセキュアの研究者Johannes Raveにより行われているが、彼は昨年、Aaltoのコースに参加した後、エフセキュアラボに加わった。JohannesはAndroid脅威の自動検出に関する論文に取り組んでいる。特に彼は、PandaBoard開発ボード(以下に写真がある)などのツールを用いて、分析作業を自動化する研究を行っている。

Pandaboard

  我々は同コースに、より多くのAndroidマルウェア分析技術を導入することも決定した。アジェンダには他にもいくつか変更が加えられ、今春のコースは「Reverse Engineering Malware」と呼ばれている。コース後には、学生の皆さんが古き良きWindowsであれAndroidのような他のプラットフォームであれ、あらゆるタイプのマルウェア分析に必要なスキルを獲得できることを願っている。

マルウェア分析を学ぶ

  もしあなたが、ヘルシンキのアールト大学で学んでいるとしたら、明日は聞き逃したくないレクチャーがある。我々のチーフリサーチオフィサー、ミッコ・ヒッポネンが、マルウェア分析およびアンチウイルステクノロジに関するコースを開くのだ。

  これは過去3年間、我々がアールト大学と協力してアレンジしてきたコースだ。人々がリバーズ・エンジニアリングのスキルを学び、マルウェア分析について学ぶのを見るのは、いつでも嬉しいものだ。毎年、我々は学生のスキルをテストするためのホームワークパズルを作成している。今春はラボで働いているTimoが同コース用のパズルを作成する予定だ。Timoは、以下のように始まる「T2'10 Challenge」の作者でもある。

T2 2010 Challenge

  もしこれが奇妙に見えるなら、画像に変えることもできる:

T2 2010 Challenge as a picture

  これもまだ奇妙に見える? もっと多くのパズルを解くのを楽しみ、コースの単位を取ろうと考えるだろうか? それならば、コースでお目にかかれることを楽しみにしている!

  同大学の学生でなくても、教材を同コースのページから閲覧することができる。コース中、我々は同ページに新しい教材を追加する予定だ。

DLLハイジャックとライブラリの読み込みが難しい理由

  ここ数日、DLLハイジャック(あるいは「バイナリプランティング」)のカテゴリに分類されるエクスプロイトが、多くの注目を集めている。AppleのiTunesには問題があり、他の多くのアプリケーションも同様のようだ。

  この問題は実はまったくシンプルなものだ。攻撃者が誰かをだまして、フォルダからデータファイル(たとえばiTunesの場合はMP3ファイル)を開かせようとし、同時に、同じ場所のどこかに、悪意あるダイナミックリンクライブラリ(DLL)を置く。こうすることで、脆弱なアプリケーションに悪意あるコードを実行させることが可能になる。したがってネットワークシェア上で誤ったファイルをダブルクリックすると、マシンが感染してしまう可能性がある。

  全ての問題は、決して新しいものではない。Thierry Zollerが指摘しているように、ほぼ同一の問題が10年も前に報告されている。我々は何故、現在多くの新しい脆弱性を目撃しているのだろうか? 多くは、先週の日曜、HD Mooreにより提供された新しいツールに起因している可能性がある。同ツールは、このよう脆弱性の発見を非常に容易にするのだ。

  よって、安全を保つためには何をすることができるだろうか? Microsoftが、この問題について「Security Advisory 2269637」を発表している。リスクを軽減する方法がいくつか紹介されている。また各製品の脆弱性には、ベンダからのアップデートを適用するべきだ。

  我々はもちろん、この事態を詳しくフォローし、この脆弱性を悪用している悪意あるDLLの検出を追加していく予定だ。

  現在、我々のソフトウェアにいかなる脆弱性も見いだしていないが、この問題に関し、さらに調査を進めていく。

サインオフ
アンティ

追記:Windowsソフトウェアの開発をしている皆さんに:LoadLibrary(「mylibrary.dll」)という単一のファンクションを明確にするのが、こんなにも難しいというのは奇妙なことではないだろうか?

LoadLibrary MSDN

  LoadLibraryのドキュメンテーションはおよそ1100語で、詳述しているページは1000語、そして本当に理解するための方法を紹介しているページは900語以上となっている。およそ3000語、あるいはこの記事の10倍ほどの長さだ。LoadLibraryを気に入るだろう!

大学でマルウェア分析に関するコースを実施

  この2年、我々はヘルシンキ工科大学と協力し、F-Secure Labsのリサーチャーがセキュリティを専門とするコースでレクチャーを行ってきた。

  嬉しいことに、この春も例外ではない! 我々はリバース・エンジニアリングからアンチウイルス・エンジン・インターナルまでカバーし、IDA ProやOllydbgといった実際のツールを用いて、学生にスキルをテストさせるホームワークなどを提供する予定だ。

  現在、実際のマルウェア・サンプルは学生に配布していないが、講義ではリアルな事例を数多くカバーする。長年にわたり変わっていないのは、マルウェアの作者が自分たちの制作物に秘密のメッセージを残すという習慣だ。紹介するサンプルを検討し、いくつかの例をピックアップした。以下は1986年に登場した初のPCウイルス、Brainに影響を受けたブートセクタだ:

Boot sector infected by Brain

  そして以下は、2009年のクリスマス休暇中に見られたルートキット・ドライバで、発見するのがそれほど容易ではないメッセージを作成しようとするものだ:

Strings in a TDL3 rootkit variant

  講義ではこれら双方のケースに触れる予定だ。

  もし皆さんが同大学の学生ではないなら、教材はコースのページから見ることができる。同ページには、コースの進行と共に新しい教材を追加する。

ベガスで「Black Hat」が開催

ラスベガスで、Black Hatブリーフィングの初日が終了しようとしている。Black Hatは最大のセキュリティ・カンファレンスの1つで、常に熟練リサーチャーたちが研究発表に招かれている。

Jeff Moss opening BlackHat 2009

  BlackLightルートキット・スキャニング・テクノロジに深く関わってきたため、私は多くのRootkitトラック・セッションに出席して過ごした。初日にはいくつか、興味深いプレゼンテーションがあった:

Stoned Bootkit, Peter Kleissner

  Peterは、Master Boot Recordを使用して、ブートプロセスの早い段階でアクティベートするルートキットを作成するための、オープンな開発フレームワークについて発表した。同テクノロジの大部分は以前のリサーチで周知のものだが、恐ろしいのはStoned Bootkitの拡張性にある。

Stoned Bootkit

  Peterは簡単に、いくつかの拡張例に触れた。一つの例は、環境保護という目的で、ACPIを使用してCPUを減速させるCO2ルートキット・プラグインだ! さて、これはまったく素晴らしいが、私の考えでは、Stoned Bootkitフレームワークの最も熱心なユーザは、同マルウェアのオーサー・コミュニティにいるだろうと思う。私の言葉を額面通り受け取って欲しいのだが、彼らがコミュニティに参加しているのは、熱帯雨林を守るためでは無いはずだ。

Ring -3 Rootkitsの紹介, Alexander Tereshkin および Rafal Wojtczuk

  ルートキットは発達し続けている。先年は、ユーザモード(Ring 3)からカーネル(Ring 0)へ、カーネルからハイパーバイザ(Ring -1)に進み、そしてついにはシステム管理モード(Ring -2)まで進んでいる。

Alexander Tereshkin presenting

  AlexanderとRafalは、Intel AMT実行環境で、悪意あるコードを実行する可能性について調査した。AMTはリモート管理のためのものだが、残念なことに、良き人々にとってはリモート管理であっても、攻撃者にとってはルートキットによるバックドアを意味している。しかし、これがルートキット・カウントダウンの終結でないことは間違いない。Ring -4 ルートキットがどこで動作するかなど、誰が推測したいと思うだろうか? とは言え、我々は間もなく知ることになるだろうと、私は確信している。

  もちろん、すべてがルートキットについてだ、という訳ではない。初日には、SSL/TLSのビルディングブロックの1つである、X.509に関する2つの興味深い講演があった。

Dan Kaminsky presenting

  その中で、Moxie MarlinspikeとDan Kaminskyがそれぞれに、ほとんどのインプリメンテーションに関わる問題を発見した。すなわち、攻撃者がすべてのWebサイトで有効であるように見える証明書を作成することを可能にする問題だ。証明書のネームフィールドに、巧みに空文字を埋め込むことにより、ブラウザが悪意ある証明書を正当なWebサイトに誤ってマッチングさせるのだ。どちらのリサーチャーも素晴らしい仕事をしている!

ラスベガスからサインオフ
Antti

PS. もし皆さんがBlack Hatに出席されているなら、木曜の午後に行われるミッコのConfickerワームに関する講演をぜひお聞き頂きたい。

バックナンバー
セキュリティ関連リンク
セキュリティ機関

政府関連

セキュリティ関連団体

研究機関・大学
詳細カテゴリ
メディア関係者の皆様へ
エフセキュアブログメンバー
エフセキュアブログメンバー
ミッコ・ヒッポネン
エフセキュア CRO(セキュリティ研究所主席研究員)(ヘルシンキ)
(Twitterアカウント)
(研究所Twitter)
ショーン・サリバン
エフセキュア セキュリティ・アドバイザー(ヘルシンキ)
(Twitterアカウント)
高間 剛典
メタ・アソシエイツ代表
(公式ブログ)
(Twitterアカウント)
星澤 裕二
株式会社セキュアブレイン 最高技術責任者
(公式ブログ)
(人物紹介)
岩井 博樹
デロイト トーマツ リスクサービス株式会社 (〜2013年3月 株式会社ラック) 情報セキュリティ大学院大学 客員研究員
(Twitterアカウント)

(人物紹介)
福森 大喜
株式会社サイバーディフェンス研究所 上級分析官
CDI-CIRTメンバー
(人物紹介)
鵜飼 裕司
株式会社FFRI 代表取締役社長
(人物紹介)
福本 佳成
楽天株式会社
執行役員
OWASP Japan
アドバイザリーボード
Rakuten-CERT representative
(人物紹介)
神田 貴雅
エフセキュア株式会社 プロダクトグループ 部長
富安 洋介
エフセキュア株式会社 プロダクトグループ
コーポレートセールスチーム
エフセキュア株式会社
(エフセキュアブログ公式Twitterアカウント)

海外記事翻訳
株式会社イメージズ・アンド・ワーズ
エフセキュアメールマガジン

ブログに載らないメルマガ限定情報や、技術者インタビュー、製品情報、技術解説を掲載して毎月一回配信します。アドレスのみの登録で購読無料。

エフセキュアブログQRコード
QRコード