エフセキュアブログ

by:福森 大喜

まだまだある、BECの手口

先月、BEC(Business Email Compromise)の典型的な手口を紹介しつつ、注意喚起を行いました。
エフセキュアブログ : 社長のメールは真に受けるな!

このブログ記事のように社長のメールであれば無視しておけば済むんですが、BECというのは、いわゆる詐欺ですから、攻撃者は手を替え品を替え、あの手この手で襲いかかってきます。時に攻撃者はこちらがメールを無視できないという立場を巧みに利用することもあります。

まず攻撃者は企業のウェブサイト内にある問い合わせフォームからメッセージを送ります。問い合わせ内容は、「御社の新製品に興味があるので、カタログを送ってほしい」という感じです。

Contact Form
[一般的な問い合わせフォーム]

当然そういったメッセージを受け取った企業は喜び勇んで返信するでしょう。

Scheme1
[攻撃者が企業からの返信を受信したところ]

ここで、攻撃者は受信したメッセージへリプライしますが、その際にマルウェアを添付します。
Scheme2
[攻撃者がマルウェア付きメールを送信しているところ]

マルウェアの中身はこのように実行ファイル(bat,exeなど)になっています。
Scheme3
[添付ファイルの中身]

担当者は自分で送ったメールに対する返信なので、ついうっかり添付ファイルを開いてしまう・・可能性が高くなるというのが攻撃の手口です。

対策:
実行ファイルをダブルクリックしないように注意するという精神論ではどうしても限界がありますので、不特定多数の顧客から問い合わせを受け付ける人の端末では、実行ファイルの実行をシステム的に制限しておくことをおすすめします。
具体的な方法は過去の記事で紹介しています。

社長のメールは真に受けるな!

BEC(Business Email Compromise)というサイバー犯罪の手口が、昨年から少しずつ話題になりはじめ、FBIからも再三に渡って注意喚起が出されておりまして、先日とうとう合計の被害額が31億ドルを超えたそうです。

Business E-mail Compromise: The 3.1 Billion Dollar Scam
Internet Crime Complaint Center (IC3) | Business E-mail Compromise: The 3.1 Billion Dollar Scam より

日本ではビジネスメール詐欺と呼ばれていますが、その手口を簡単に紹介します。

犯人は社長(または経理担当者や取引先など)になりすまし、従業員にメールを送ります。
今出先なんだけど、この前話してた業務提携の件で至急この口座に300万円送金してくれ!

普通こんなメールを受け取ったら即スパムフォルダ行きでしょう。
ところが、もし実際に提携話が存在しており、この従業員が社長から、
今度の出張で提携先候補と契約金500万円前後で交渉する。終わり次第結果を連絡する。
というメールを事前に受け取っていたとしたらどうでしょう?

犯人はあらかじめマルウェアやフィッシングなどを利用し、社長のメールボックスを盗み見ていますので、事前の会話内容を把握しタイムリーな話題を使うことが可能なんです。

数週間後には、
従:社長、この前の契約金の領収書が来ないんですが・・
社:契約金?何の?
従:えっ?
社:えっ?
となりそうですが、犯人はメールボックスの監視を続け、なりすましで適当にお茶を濁しながらマネーロンダリングのための時間を稼ぎます。

Stalling
犯人がお茶濁しメールを作成している様子

抄訳
被害者:今日銀行に確認しましたが、まだ入金されていませんでした。再度銀行に確認しますので、送金に使った銀行コードを教えてください。

犯人:ご機嫌いかがですか?健やかにお過ごしのことと思います。
ご参考までにお伝えしておくと、こちらは先日まで休暇をいただいておりまして、本日より業務に復帰したところです。送金に関しては情報をいただけると幸いです。

相手がいくらタイムリーな話題や二人だけの秘密を知っているからといって、信用してはいけません。
社長以外にも、取引ベンダーや経理担当、弁護士などになりすますパターンもありますが、
典型的な手口として、外出先や緊急事態を理由にしてフリーメールで連絡が来ることが多いです。そこで気づければよいのですが、それよりも基本的な対応として、「振込先の変更」や「新規の振込先」などをメールで指示されたとしても必ず電話でも確認する、ということをおすすめします。

今のところはまだ英語での詐欺が主流ですので、海外とのやりとりが多い企業の方は特に要注意です。

ウイルス対策ソフトの第三者評価

ウイルス対策ソフトの選定にお困りの方は多いと思います。そのため、第三者評価ということでいくつかの機関が評価結果を出しています。が、評価機関も複数あって、どの評価機関のものを信用していいかわからないというのが実情だと思います。

さらに、当然のことながら各社のマーケティングは自分たちに都合の良い結果が出ている評価を意図的に選んで使うため、結局、各社ともに「自分たちがトップ!」というグラフが出てきます。

ThirdParty_Symantec ThirdParty_Trendmicro ThirdParty_Kaspersky
第三者機関の評価・受賞暦|シマンテックストアより引用 エンドポイントセキュリティ製品(個人向け)の技術評価 | トレンドマイクロより引用 カスペルスキー製品、2015年の第三者評価機関のテストに94回参加し、60回のトップ評価を受賞 | カスペルスキーより引用

そんな中、エフセキュアブログの記事、エフセキュアブログ : AV-Comparativesによる現実世界のテスト結果は一味違います。
ThirdParty_FSecure
エフセキュアブログ : AV-Comparativesによる現実世界のテスト結果より引用

よく見るとこれは「自分たちがトップ!」というグラフではなく、あえて順位を書き出してみると、
一位:カスペルスキー
二位:トレンドマイクロ
三位:エフセキュア
となっているのです。

これは確かに信用できそうですね。

「Petya:ディスク暗号化ランサムウェア」に感染したマシンの復旧

エフセキュアブログによると、Petyaに感染するとマシンを復旧する方法は一つしか無いと書かれています。

エフセキュアブログ : Petya:ディスク暗号化ランサムウェアより抜粋
サーバのヘルプ無しでマシンを復旧する唯一の方法は、デバッガを使って感染プロセスの途中でsalsa20のキーを捕捉することだ。これは通常のコンピュータユーザにとっては、あまり魅力的な対抗手段ではない:)
皆さんお分かりかと思いますが、これはエフセキュアブログ流のジョークであり、実際には「復旧方法は無い」という意味の文章です。

しかしその後、leostone氏が感染マシンを復旧する方法を発見し、公開しました。(hack-petya mission accomplished!!!)
もはやPetyaに身代金を支払う必要はありませんし、デバッガを使う必要もありません。

復旧までの道のりを簡単に紹介します。
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明らかによろしくない分類

毎度示唆に富んだ記事が投稿されることで人気を博しているエフセキュアブログですが、先日も大変趣のある記事が投稿されました。

エフセキュアブログ : Locky:明らかによろしくない振る舞いより引用:
当社のソフトウェアDeepGuardを実行している場合、ビヘイビア検知エンジンが、Lockyの用いる攻撃の媒介メールと、マルウェアの振る舞いの双方を阻止する。すでにかなり長い間、双方とも検知している。
(中略)
Lockyおよびそのバリアントに関連する悪意ある振る舞いは、以下の3つの検知によりブロックする。
  •     Trojan-Dropper:W32/Agent.D!DeepGuard
  •     Trojan:W32/Pietso.A!DeepGuard
  •     Trojan:W32/TeslaCrypt.PE!DeepGuard
(中略)
もしこのJavaScriptを実行すると、Lockyの実行ファイルをダウンロードし実行する。このバリアントはTrojan-Downloader:JS/Dridex.Wとして検知する。

要するに、LockyというランサムウェアはTeslaCryptやDridexとかの名称で検知する、と。
ほとんどの方は意味が理解できていないと思いますが、TeslaCryptもDridexもLockyとは全く異なるマルウェアだけど、検知するんだからまあいいじゃん、というブログ記事です。
実際のところ、ウイルス対策ソフトの役割はマルウェアを検知して感染を食い止めることであり、白か黒かの判断さえ間違っていなければOKというスタンスなので、方針として間違ってはいないわけですが、フィンランド企業の洗練されたイメージからするとちょっと意外です。
(お客様からのインシデント報告を受けて対応する私の立場からすると、ランサムウェアとバンキングマルウェアとでは対応が全く異なりますので、ちょっと困るのですが。)

このあたりの大雑把さ加減や努力の諦め具合を各社と比較してみると面白いです。

Lockyの実行ファイル (1fd40a253bab50aed41c285e982fca9c)
2016/2/16 2016/3/24
エフセキュア 検知せず Trojan.GenericKD.3048336
カスペルスキー 検知せず Trojan-Ransom.Win32.Locky.d
マイクロソフト 検知せず Ransom:Win32/Locky!rfn
シマンテック Suspicious.Cloud.5 Trojan.Cryptolocker.AF
トレンドマイクロ 検知せず Ransom_LOCKY.A

JavaScriptで書かれたLockyのローダー (6288aee880e2775046f1388b28b87ea0)

2016/3/23 2016/3/28
エフセキュア
Trojan-Downloader:JS/Dridex.W Trojan-Downloader:JS/Dridex.W
カスペルスキー
HEUR:Trojan-Downloader.Script.Generic Trojan-Downloader.JS.Agent.jkb
マイクロソフト 検知せず 検知せず
シマンテック 検知せず 検知せず
トレンドマイクロ 検知せず JS_LOCKY.KB
#ローダーだけでは悪意を判断できないので、「検知せず」は見逃しを意味するものではない。

元記事にある「すでにかなり長い間、双方とも検知している」というのが具体的にどれくらいの間なのかもわかりますね。

今年度のCTFを無双した韓国チーム、その強さの秘密

DEFCON優勝の快挙に始まり、HITCON、SECCONも制覇した韓国CTFチームCyKorですが、その母体がBoB(Best of the Best)というサイバーセキュリティエリート技術者養成所だというのは有名な話です。

秀逸なのは養成所の基本コンセプトで、毎年数千人の応募者の中から選ばれた100名余りの受講生に対して教育を提供する過程において、いかにして特に優秀な10人にまで削っていくか、という点が重要視されているのです。残酷な言い方をすれば、せっかく最初の140名に選ばれても養成所内での成績が悪いと、すぐにクビになります。

bob1
BoBのWebサイトに記載されている基本的なコンセプト

先日、その養成所に講師として呼ばれ、六日間の特別講義をする機会に恵まれましたので、その一端を紹介したいと思います。私が担当したのは30人から10人に絞り込むステージです。
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ボットネットテイクダウン狂想曲

オンラインバンキングを標的としたボットネットDridexが、テイクダウン後に衰えを見せるどころか、さらに勢いを増しているということで話題(Dridexの解体, Botnets spreading Dridex still active)になっています。

テイクダウンの是非については昔から賛否両論ありまして、割れ窓理論とよく似た議論が交わされています。
端的に言えば、「どうせすぐ復活するから、やる意味ないよ」という批判をよく耳にするのです。

参考までに、最近のボットネットテイクダウン作戦を対象に、VirusTotalにアップロードされているマルウェア検体数が、テイクダウン実施前後でどう変化しているかを調べてみました。

横軸は検体がコンパイルされた日付(つまり検体が作成されたであろう日付)、縦軸はアップロードされている検体数で、グラフごとに目盛りが異なるので注意。コンパイル日時は偽装可能なので、あくまで参考情報として。

Ramnit

公表されている感染端末数:320万台
テイクダウン実施時期:2015年2月
主導した機関:ユーロポール
参考情報:自身をブロックするウイルス
Takedown_Ramnit
Simda

公表されている感染端末数:77万台
テイクダウン実施時期:2015年4月
主導した機関:インターポール
参考情報:Simdaボットを射る3本の矢
Takedown_Simda
Beebone

公表されている感染端末数:10万台
テイクダウン実施時期:2015年4月
主導した機関:ユーロポール
Takedown_Beebone
Vawtrak

公表されている感染端末数:8万2000台
テイクダウン実施時期:2015年4月
主導した機関:警視庁

Takedown_Vawtrak
Dridex

公表されている感染端末数:非公開
テイクダウン実施時期:2015年10月
主導した機関:FBI、NCA
参考情報:Dridexの解体
Takedown_Dridex

Simdaのようにテイクダウンを境として活動が沈静化した事例もあれば、DridexやRamnitのように逆に活発化してしまった事例もあるという結果でした。

上述の割れ窓理論に関する否定的な主張として、「社会学は割れ窓理論に優しくはない。」という文章がWikipediaには載っていますが、「社会学はボットネットテイクダウンに優しくはない。」とも言えるようです。

それでも私個人的にはボットネットのテイクダウンに賛成派だったりします。賛成というのは、テイクダウンをやれば万事解決という意味ではなく、テイクダウンもボットネット一掃作戦の一部として有効だという意味です。実際、テイクダウンをきっかけとして捜査が進展することはよくあります。

ダイジンとユージン

先月のことになりますが、Cyber3 Conference Okinawa 2015という国際会議に私も休暇がてら参加してきました。

c3
(サイバークライムのセッションでは、インターポールIGCIへの期待の高さを肌で感じた。)


初日の全体セッションには、日本政府からダイジンという方が登壇され、
なぜ、世界の優秀な技術者はグーグルやアップルのような企業に行くのか。これは給料が高いからではない。技術者の探究心を満たせる環境が整っているからだ。それと同じように日本の技術者も、社会貢献という大義のために、安い給料で頑張ってほしい。
という趣旨の発言がありました。

ダイジンのそういった発言がある一方で、二日目には、世界的に有名なサイバーセキュリティ企業を経営するユージンという方が登壇されました。そのロシア企業は世界中からトップレベルのセキュリティ技術者(ハッカー)をかき集めていることでも知られ、アンチウイルス業界のグーグルとまで言われたり、言われなかったりします。
ユージンは、
十分な数のセキュリティ技術者を抱えている国など世界中探してもどこにもない。どんどん投資して、教育して育てなければならない。数が少ないからこそ、彼らにはフットボールプレイヤー並みの給料がかかるが、企業にも政府にもまだまだセキュリティ技術者が必要とされている。
と発言されました。
さすが、一癖も二癖もあるハッカーの年俸を決定する立場にある経営者の言葉からは苦労と覚悟が伝わってきます。それにエンジニア出身の経営者というだけあって、セキュリティ技術者の心情もよく理解しています。

サイバーセキュリティ業界を志す学生の皆さん、リーガ・エスパニョーラ(スペインプロサッカーリーグ)の平均年俸は2億7千万円、ロシアプレミアリーグでも3千万円だそうですよ。

参考情報:【ハリルジャパン】2015シーズン年俸ランキングが意外すぎるww

数独マルウェア vs. EMET 5.2

数ヶ月前、悪意のある数独問題ファイルを読み込むことの危険性について注意喚起を行いましたが、昨今の標的型攻撃の手口は悪質化、巧妙化の一途をたどり、ソーシャルエンジニアリングを駆使した攻撃手法も洗練され、もはや「悪意があるかどうかを事前に判断」することが困難になりつつあります。つまり、「不審な数独問題ファイルを開かない」というのが対策として機能しなくなってきたのです。

そこで近年注目されているのが、マイクロソフトが提供するEMETに代表されるような脆弱性防御(緩和)ソフトウェアです。
早速、EMETを有効にした状態で数独マルウェア(正確に言うと数独Exploit)を使って攻撃してみましょう。
デフォルトで3つのセキュリティレベルが用意されていますので、最高レベルの「Maximum security settings」を選択して実験を開始します。

SudokuExploitWithEmet52

なるほど、確かに攻撃を検知して防御してくれました。

では次に、EMETによる防御をバイパスしてみましょう。EMETの解説を読む限りでは、攻撃に使われる典型的な振る舞いをパターン化しているようです。そこで、一直線に攻撃に向かうのではなく、わざわざ遠回りをして攻撃してみます。例えて言うと、スタート地点Aから目的地Bに向かいたいが、途中に検問がある。だったら一度経由地Cを通ってから目的地Bに向かおうという、いたってシンプルな作戦です。
要するに
A -> B
という命令は
A -> C
C -> B
という二段階の命令に置き換えます。

完成した攻撃コードを実行した動画です。



脆弱性防御ソフトウェアは、あわてんぼうの攻撃者にとっては有効ですが、精巧に攻撃されるとまだまだバイパスが可能、という段階のようです。

また今回の実験はEMETだけでなく他の標的型攻撃対策ソフトに対しても同様にバイパスが可能でした。

「不審な数独問題ファイルを開かない」という自信の無い方は、業務用PCと数独用PCを分けることをおすすめします。

2015/10/06追記: EMET 5.5 Betaでも結果は同じでした。

トップガンを越えてゆけ

NHKのプロフェッショナルというテレビ番組の中で、"サイバーセキュリティー技術者の中でも最高の技術を持つトップガン"ということで「あの」名和さんが登場しました。

名和利男(2015年9月14日放送)| これまでの放送 | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀

特にマルウェア解析シーンでは突っ込みどころがたくさんありますが、テレビということで大目に見てもらうとして、技術者が誤解したままではマズイと思うことを一点だけ。

終盤でのマルウェア解析の際に、VirusTotalでの検索結果で「b1ef92??」という文字列が出てきたことから、IPアドレスが「177.239.146.???」だと判断してメキシコのサーバを経由した攻撃である可能性がある、という話になっています。
おそらく「b1ef92??」を1バイトずつに分解して、16進数から10進数に変換したのでしょう。

16進数表記 b1 ef 92
10進数表記 177 239 146

ところが、そもそもこの値はVirusTotal独自のハッシュ値ですので、こういった計算でIPアドレスを割り出すことはできません。よって、メキシコというのは誤報でしょう。

では、どこの国を経由した攻撃なのか。それはマルウェア検体自体を解析するのが一番確実です。

マルウェアの中身を見ると、サーバのアドレスは暗号化されていますが、復号ロジックも復号鍵もマルウェア検体自身の中に入っていますので、それを用いて復号するとマルウェアの通信先がわかります。

malwareanalysis

その通信先から、二つ目のサーバに関する情報を暗号化された形で取得できますので、同様に復号すると攻撃者のサーバのIPアドレスがわかります。
そのサーバにアクセスした結果がこちらです。

iisrdp

明らかにメキシコ以外の国が絡んでそうですね。

悪意のある数独問題ファイルを読み込むことで任意のコマンドを実行される脆弱性

概要
シンガポールの首相リーシェンロン氏によって開発されたSudoku solverには、バッファオーバーフローの脆弱性が存在します。

sudoku-2015-000001

影響を受けるシステム
Sudoku solverを組み込んだシステム

詳細情報
Sudoku solverには入力データの処理に起因するバッファオーバーフロー (CWE-121) の脆弱性が存在します。



想定される影響
細工された数独問題ファイルを読み込むことで、任意のコードを実行される可能性があります。

対策方法
不審な数独問題ファイルを開かないようにしてください。

参考情報謝辞
IT先進国を目指す国家のリーダー像を自らの行動で示すリーシェンロン氏に対し深い謝意を表します。

年金機構を襲ったマルウェアに感染しているかを1分で確認する方法

さすがに高性能なフォレンジックソフトを使えば簡単に見つけられるようです。

focus-s
株式会社フォーカスシステムズが公開した
年金機構への標的型攻撃に利用された「Emdivi」のResponder Proによる検知と解析


ただ、一般の方にしてみればちょっとオーバースペックかもしれませんので、もっと簡単に確認する方法を紹介します。

タスクマネージャーを開き、対象プロセスを右クリック、「ダンプファイルの作成」を選択します。
taskmanager_emdivi

あとは、作成されたダンプファイルからC2サーバのドメインを検索するだけです。
上記のサイトによると東京都港区にある海運企業のドメインは「p」で終わるようですので、「p.co.jp」で検索します。
cmd_emdivi

海運企業っぽい名前が出てきたら感染しています。

実際には海運企業以外もC2サーバとして使われていますので、もうちょっと汎用的なキーワードのほうがいいかもしれません。
cmd_emdivi2

ランサムウェアから身を守るための裏ワザ

エフセキュアブログでも頻繁に取り上げられているように世界中でランサムウェアが猛威を振るっています。
PC内のファイルを暗号化し使えなくすることで、重要なファイルを人質に取り、元に戻して欲しければ身代金(ランサム)を払え、というやつです。

TorLocker

どのアンチウイルスベンダーも再三警告しているのにも関わらず、感染被害は減る気配がないどころか増える一方です。
理由は、アンチウイルスベンダーと一般ユーザの間には次のような溝があるからだと思われます。

続きを読む

Simdaボットを射る3本の矢

インターポール、マイクロソフト、カスペルスキー、トレンドマイクロと協力しSimdaボットネットのテイクダウンを行いました。
カスペルスキーから出向している同僚から報告があるように、このマルウェアは多くの解析妨害機能があるため、アンチウイルスベンダーのサンドボックスではうまく検知することができていませんでした。

そこで、サイバーディフェンス研究所が手動で解析を実施し、その解析結果を元にしたアンパッカーと暗号化された通信、設定ファイルの復号ツールをマイクロソフトやアンチウイルスベンダーに提供し、全容の解明に協力しました。

また、すでに感染しているユーザへの対応として、次の3つ(3本の矢)を用意しました。
感染が疑われる場合には、次のように表示されます。
Simda Botnet DetectorSimda Check

各矢の守備範囲は次の表のようになっています。

No. 感染時期、感染環境など IP Scanner
アンチウイルスソフト 自動 hosts check 手動 hosts check
1
自己消滅前(※)
2
自己消滅後 ×
3
テイクダウン前のマルウェア活動 ×
4
テイクダウン後のマルウェア活動
5
亜種への対応
6
マルウェア感染活動前 × × ×
7
動的IPアドレス環境での感染 ×
8
プライベートIPアドレス環境での感染 ×
※ 様々な条件により、マルウェア検体自身が削除される場合とされない場合がある

この中で感染者数が多いのが2番と3番だと思われます。
個人的にオススメする一番手っ取り早くて確実な確認方法はhostsファイルの手動確認です。

最強の情報分析者を目指して

情報収集担当者と情報分析担当者、どちらに適性があるかを評価してくれるサイト「INTELLIGENCE SKILLS CHALLENGE」を公安調査庁が開設しました。

サイバーディフェンス研究所の情報分析部としては当然、圧倒的な情報分析者適性を持っている必要があります。
そこで、まずは念入りに情報を分析しながら100%の情報分析担当者を目指します。

ISC1

途中で苦渋の選択をせざるを得ない質問もありましたが、100%を達成しました。しかしその結果をよく見ると適性の割合だけではなく、点数も表示されるようです。200点満点中50点くらいしか取れていないようで、これでは情報分析部失格です。

では次は、200点満点を目指してみましょう。

ISC2

200点満点を取れたのはいいんですが、今度は逆に適性の割合が大きく下がってしまいました。

サイバーディフェンス研究所情報分析部に求められる能力はこんなものではありません。情報収集能力、情報分析能力ともに満点かつ情報分析者適性が100%である必要があります。

ところがこのサイトでは、情報収集能力の点数が高ければ高いほど情報分析者適性が下がる(情報収集者適性が上がる)というロジックになっているようです。
世の中に両方の能力を兼ね備えた情報分析者は存在しないのでしょうか?

そんなはずはありませんよね。どこかに見落としている情報があるはずだということで、改めて隅々まで情報を分析し直し、彼らのロジックの矛盾に挑戦した結果、無事に両方で満点かつ情報分析者適性100%を達成することができました。

ISC3

同じように判定された方はぜひサイバーディフェンス研究所の求人にご応募ください。

インターポールサイバー部門本格始動

ここシンガポールは中華圏の国だということもあり、1月1日の正月よりも旧正月(春節)のほうが本当の正月といった感じでしたので、ようやく新年を迎えた感じです
ご紹介が遅れましたがインターポールの新しいビルもほぼ完成し、すでに業務を開始しております。

BEFORE(2014年4月):
IGCI

AFTER(現在):
IGCI1

IGCI2


昨年多くの方にご協力いただいて蒔いた種は、そろそろ収穫の時期を迎えることでしょう。
本年もよろしくお願いいたします。

英国のダブルスタンダード:英国のようにハッキングするな

以下は、英国がハッキングしたとされている企業だ。
Hacked_by_UK

このベルギーの電話会社を英国がハッキングした理由はなんだろうか?

携帯の通話を盗聴するためだ。

 —————

ではダブルスタンダードとはどういうことでしょうか?
ここで英国のサイバーセキュリティ戦略(PDF)を見てみましょう。(下線は筆者によるもの。)

CyberSecurityStrategyUKCyberSecurityStrategyUK2

4つの項目が柱として挙げられています。
  • 英国のサイバー空間を世界で最もセキュアにする
  • 英国をサイバー攻撃に対して強靭にする
  • オープンで、活力があり、安定したサイバー空間の形成を助ける
  • 英国のサイバーセキュリティに関する知識、スキル、能力を強化する
EUの連合国をハッキングした国の戦略だというのが信じられないような、お行儀のよい模範解答が並べられているのです。

では気を取り直して日本のサイバーセキュリティ戦略(PDF)を見てみましょう。

CyberSecurityStrategyJPCyberSecurityStrategyJP2

「強靭な」「活力のある」「人材育成」「世界を率先」
コピペで作ったのかと思うほど似通った、安定の模範解答です。

なぜマイクロソフトはサイバー攻撃に弱いのか?

脆弱性が見つかるたびに、マイクロソフトはセキュリティを強化し進化を遂げてきました。その対策が破られると、さらにセキュリティを強化して進化します。
しかし逆の見方をすればセキュリティを強化しても破られている、と言うこともできます。

マイクロソフトは、セキュリティ開発ライフサイクル(SDL)という、理路整然とした仕組みを開発体制に組み込んでいるようでして、これを読む限りでは攻撃者が付け入る隙はなさそうですが、残念ながらどこかしらから破られているのは事実です。

様々な大人の事情があるのでしょうが、「どのように破られるのか」の事情の一端をうかがい知るための一つの切り口として、技術者向けにはなりますが、破られる仕組みをアセンブリレベルで体験していただく企画をCodeIQの中で数ヶ月前に始めてみました。

MsIsVulnerable

マイクロソフト製品にはデフォルトでセキュリティのための仕組みが組み込まれますが、それらをいかに破ることができるか(できたか)を体験いただけるかと思います。(中にはSDL以前の話もあります。)

この世は標的型攻撃に満ちている?


当該マルウェアが、このセルフサービスのプラットフォーム用のソフトウェアを実行しているマシンのみを狙ったものと仮定しても間違いないだろう。

いやいや、間違いあるだろう。NCR社製以外のATMをお使いの業者の方も安心してはいけません。

問題となっているWOSA/XFSという規格は、ウィキペディアでの説明によると、ベンダーごとにばらばらだったATMの規格を統一するために作られた規格です。WOSAのOはOpenのOですので、わざわざ百度(バイドゥ)さんの力を借りなくても誰でもソースコードレベルで実装を手に入れることができます。NCR社だって、XFSを使っていることを堂々とオープンに宣伝しています。

そういうわけですので、「NCR APTRA XFSソフトウェア」がインストールされていなくてもマルウェアは動きます。実際にmsxfs.dllをインストールした私の手元にあるWindowsでも動いています。



残念ながら手元のWindowsには現金が入っていないので、現金があるかのようにエミュレートしています。
(エミュレート部分は弊社エンジニア(op)により作成されました。)

要するに、統一規格であるXFSを採用しているATMであれば被害を受ける可能性があるということです。

じゃあ日本ではどれだけ採用されているのかというと、ウィキペディアのXFSのページには次のように書かれています。
日本国内の主要ATM及び通貨処理機メーカーは、ほぼ全ての金融関連製品で本規格(旧版を含め)を活用している

情報化先進国シンガポールを支える技術

せっかくシンガポールに住んでいますので、世界最先端の情報化社会を実現したと言われるシンガポールの街並とその中に垣間見える情報化社会を支える技術をご紹介しましょう。
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